In other words

I really don't know life at all ...

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50過ぎたらとにかく髪とメイク!ユーミン苗場プリンスでの発見。

先日のこと、毎年苗場プリンスホテルで開催されている松任谷由美さんことユーミンのコンサートに出かけた。

このコンサートには30数年前の若かりし頃に何度か足を運んだことがあった。当時はバブル期で「私をスキーに連れてって」と、多くの若者が週末にスキーへ行っていたような時代だ。
私も例に漏れず、友人に誘われては新潟へ足を運んだものだった。
そんな時、やはりお友達から「苗場プリンスでユーミンのコンサートがあるから、スキーの後に行かない?」とお誘いがあった。宿泊も苗場プリンスでスキーをした後に食事をして、その後にそのままコンサートを観に行けるというのでついて行くことにした。

これがすごく楽しく、その後何度かお誘いされるままに苗場で楽しい時間を過ごしたのだった。
青春の一ページである。

昨年、長女とブルーノ・マーズのライブを観るため、わざわざ大阪まで遠征した際、そんな若かりし頃の楽しかった思い出話をした。

「ホテルの部屋の窓からゲレンデでナイトスキーを楽しむ人達を眺めながら一杯呑んで、まるでユーミンの歌の歌詞みたいな光景を楽しむの。そして夜9時ごろからほろ酔い気分でコンサートに行って、日付が変わる頃まではしゃいで、祭りの後にまたしんと静まり返った夜のゲレンデを見ながら夢の一夜を見送る。。。そんな素敵な時間だったわ」

遠く彼方へ過ぎ去った青春の美しかった記憶を脳裏に浮かべながら、こんこんと思い出を語る私。視線はもはや目の前の娘を素通りし、心の中に残る静かな幻に向けられていた。。。
気持ちが悪いほどおセンチだ。

視線は定まらず、心は大阪リーガロイヤルホテルではなく、苗場プリンスへと飛んでいた。
三十数年もの時間を遡り、20代に戻っていた私が怖くなったのか、娘が「大丈夫?どこ見てるの?」と、私を今に引き戻したのだった。


そんな私の思い出話に興味を持ったのか、一人で行かせるには危ないと思われたのか、「楽しそう!それならチケット応募してみない?」ということになった。

コアなファンの間ではプラチナチケットとされている人気のコンサートで、チケットの当落などがその界隈では話題になる。
古参のファンには申し訳ないけれど、「懐かしい。何十年ぶりにあの苗場に行ってみようか」そんな軽い気持ちで応募してみたところ、運良く当選したため長女と連れ立って苗場へ行ったというわけだ。



そして当日、懐かしの苗場プリンスに上陸した私達。

足を踏み入れた途端、ギョッとした。
ここ数年、長女と連れ立って色々なライブに行くのだけれど、ここだけは様子が違っていた。
人のことは言えないけれど、お年を召した方の集まりで、とてもコンサートが行われる会場という雰囲気ではなかったのだ。

私も髪の半分は白髪ではないのか?というくらいのおばさんになった。白髪染をせずにメイクをしなかったら、見られたものではない。

そんな私よりも10歳は歳上と思われるような人々の集いだ。20代の長女は驚きよりも苦笑。。。

よくよく考えてみれば、ユーミンも69歳になるのだ。ファン層もそれなりに高年齢化しているのは当然のことで、驚くようなことではない。
実際に自分だって、十分に歳をとっているではないか。。。

雑誌などで「歳を重ねることは素敵なこと」という一文をよく見かけるのだけれど、私は心底そう思えない。
確かに50代になり、楽になったことはたくさんある。若い頃に悩んでいたようなことも「なんであんなことに苦悩していたのかしら?」と物事をおおらかに捉えられるようになった。
しかし、それすらも自分に対する期待がなくなった。また様々なことに対してようやく諦めがつき、執着から離れることができたからなのである。
何をどう美しく繕おうが、若さとは素晴らしいものなのだという気持ちは変わらない。

容姿にしても然りだ。どんなに肌のお手入れに時間をかけようが、お高い美容液を使おうが、頻繁に美容院へ足を運ぼうが、そこには限界がある。
私には20代前半の娘が二人いるので、日々その美しいばかりの若さを見せつけられているものだから、余計にそう感じる。
すっぴんでも白く輝く肌、ヘアーオイルなど塗らずとも艶々と光る豊かな髪。
これは若さあってのものなのだ。

20代のようになどとは望まないけれど、せめて実年齢よりも少しだけ若く見えたら嬉しいとあれこれ試行錯誤し、「これくらいなら上出来よね」などと内心思っていた。
ところが、苗場プリンスのロビーに立った瞬間、そんな自己満足がガタガタと音を立てて崩れたのだ。



客観的に見れば、私もその一員なのだ。50を過ぎて肌はシミ、シワ、たるみ、くすみの大合唱。おまけに更年期太りと食べ過ぎで崩れ始めた体型。。。
あの白魚のようだった手は、へバーデン結節のような形が見え始め、どんなに高価なハンドクリームをつけてもカサカサを止めることができない。

「私はここいるみんなと同じ、もうお婆ちゃんだ。。。」

そんな事実を改めて突きつけられた瞬間であった。

何事も口にせずにはいられない性格だ。一緒にいた長女に思わずボヤキを放つ。

「年寄りばっかり!って思ったけど、私も同じなのよね。全然美しくないよね。なんだか切なくなったわ。。。」

慰めなのか、面倒だったのか、長女は「まだまだ大丈夫だから」と励ましてくれた。
それでも、まだグズグズと同じことを繰り返す私に、彼女なりの見解を述べたのだった。

「マミー!髪とメイクだよ。白髪のない艶感のある髪をセットして、肌のアラを隠すメイクをすれば、とりあえず小綺麗なマダムに見えるから」

ロビーのデスクで私がチェックインをしている間、長女は周りの人達を観察していたという。

長女はビューティーオタクゆえ、メイクや髪型、服装とその傾向を探るため、ロビーを見渡していたのだ。
周りを全く見ない私とは大違いだ。。。

長女曰く、素敵なマダムも何人か見かけたという。そしてそんな人には共通点があると。

「みんな髪をきちんとケアしてセットしてきている。メイクも厚化粧に見えない程度に、しっかりと粗を隠し、細部は光で飛ばしたり、かなり工夫している。それから服装。シンプルな明るい服を着ている人がほとんどだった」

なるほど。。。

そんな長女の言葉を聞きながら、ふとホテルの部屋を見渡した。

苗場プリンスホテルの開業は1962年。かれこれ60年以上も前ということになる。人間で言えば還暦を過ぎた年なのだ。
訪れる前までは、年月が経っているのでかなり老朽化しているではないかと想像していた。
しかし実際に訪れてみると、30数年前とあまり変わっていないように思えた。

アーチ型の入口や小さな洗面台、水道も上から押して水を出すタイプと、お部屋は作りこそ古いけれど、全体を見渡すととてもきれいだった。白い壁紙は変色もなくはげてもいない。

これはまさにメンテナンスの勝利なのであろう。



やはりメンテナンスだ。。。

これだ!建物も人間も同じなのである。
どんなに経年劣化が進もうが、劣化をメンテナンスによって隠せば、きれいに保たれるのもなのだ。逆にメンテナンスなくしては老朽化へ真っ逆さまなのである。

ここで少し明るい気分になった。
歳をとるというのは、誰もが通る道で、決して避けることはできない。
避けることはできないけれど、繕うことはできるものなのだ。

そして、歳をとるということは、なにも外見のことばかりではない。
精神的にも若い頃とは大いに違う。
私も中年になってから、未来への希望や可能性に邁進していこうという気力はなくなった。
希望なくお先真っ暗ということではなく、これからなにか新しいことを創造していこうという気持ちが起きず、とにかく安穏とこのまま平穏にと、現状維持に気持ちが大きく傾いてきたのだ。

50代は転機の時でもある。仕事をしている人はわからないけれど、私のようにずっと専業主婦でいたような人間は子育てを終え、また新しいライフスタイルを構築していかなければいけない時期だ。
そこをうまく対応できないと、空の巣症候群になったりするのだろう。

しかしバブル世代の人間というのは、どこかお祭り騒ぎが身体に染み付いて抜けないところがある。
昔の人のように、老後はおこたつに入ってみかんを食べながらテレビを楽しむでは満足いかない世代だ。

今回、苗場プリンスのレストランで隣り合ったり、エレベーターで一緒になったりした際に、少しだけ他のご婦人方とお話をさせて頂いた。
みなさん、チケットが手に入る限り、毎年のように苗場に足を運んでいるそうだ。それだけにとどまらず、全国ツアーを追いかけ、ユーミンのみならず好きなアーティストを追いかけているという方もいた。

これには長女が「すごい推し活ですね」と口を挟んだくらいだ。
推し活という言葉は、若者だけのものでないのだ。

子育てを卒業したとは言え、更年期や人によっては介護問題、そして老後の不安など、明るいことばかりではない年代だ。
それでも、様々なことに折り合いをつけながら、自分を喜ばせてあげようという健気な中年おばさんやおじさん。

歳をとってもなお、コンサートに足を運び、飛んだり跳ねたり踊ったり、倒れたり、それができるのは、喜ぶべきことなのだと思う。

たとえコンサートの後に足腰が痛くなろうが、そんなことは承知の上よ!と後先考えずにはしゃげるのは、ほんの少しだけ残った若さの残りなのかもしれないけれど、それでも今の自分が幸せだと感じられることは誠に尊い

他人事のように書いているけれど、私もまたその中の一人なのだ。
「推し活」こそしないけれど、あちこち旅行に出かけたり、好きなお菓子を求めて歩き回ったり、お友達と美味しいものを食べたり、こんなふうにブログを書いたりと、楽しめることはたくさんある。

髪とメイクに気を配り、少しでも小綺麗でいる努力を怠らず、自分の好きなことをしていこう!と改めて考えた苗場プリンスでの一夜だった。