
我が家には「お坊っちゃま」と呼ばれる猫がいる。
長毛種サイベリアンの男の子で4歳になる。
親バカではあるが、これがかなりのイケメンだ。
しかしぐうたらと万年運動不足、おまけに大の食いしん坊のため、現在の体重は8キロほどもあり、主治医からは減量を言い渡されている。
とはいえ、完全なる家猫のため運動といって外をランニングさせるわけにはいかない。
せいぜいじゃらして遊んで少しでも身体を動かすよううながすだけだ。
しかしそれでは到底減量は無理だ。そうなるとやはり食事管理が中心となる。
食事は決まった時間に朝晩の1日2回。
ウェットなキャットフードを食べるとすぐにお腹の調子が悪くなるという繊細さゆえ、カロリー控えめのタブレットを食している。
このローカロリーフードがとにかく高い…
2キロ入りで¥8,000以上もするのだ。
さらに、以前膀胱炎を繰り返したことから水分補給を助ける効果のある餌もミックスしている。こちらもまた2キロで¥6000以上とお安くない。
一度に食べる量は少しでも、毎日毎日食べていれば2キロなどあっという間だ。
まったくペットというのはお金がかかるものだ。。。
しかし、お坊っちゃまの健康には変えられない。自分のお菓子代を削ってでもお坊っちゃまには健康でいて欲しいのである。
そんなお坊ちゃまは今日もあちらこちら場所を変えては、のんびりとお昼寝三昧だ。
そして寝入りが悪いのか、気まぐれに寄ってきては「ニャーニャー」と悲痛な鳴き声をあげ、私は呼びつけられる。
そこで求められるのは「撫で撫で」だ。
気持ちよく眠れるまで撫でてあげなければ、ニャーニャーは止まらない。
撫でているとゴロンと仰向けになり、喉をゴロゴロ鳴らしやがて白目になると、ようやく解放されるのだ。
これが長い時は30分ほどご奉仕させられる。
しかし、「なにを甘ったれたことを!」をなどと、自分の子供達に言うようなことはない。
やれと言われたら(ニャーニャー)、お許しが出るまで尽くす。まさに言いなりである。
朝ぐっすり寝ている時も例外ではない。お坊ちゃまは、お腹が空いた時と撫で撫でして欲しい時は、何時だろうが容赦なくニャーニャー攻撃をかけてくるのだ。
そのくせ、お坊ちゃまは抱っこが嫌いだ。
よく飼い猫がすりすりと膝に乗ってくるとか、お布団に入ってきて一緒に寝るとか、そんなことを聞くと羨ましくて仕方ない。
お坊ちゃまは、抱っこをすると途方に暮れたような一点凝視で固まり、耐えきれなくなると「ウ〜ンニャ〜」とこの上なく悲しげな声で鳴き、腕からするりと逃げていく。
しかしこれは普段お世話をしている私や、お坊ちゃまを連れてきた長女に対する最大限の譲歩で、お坊ちゃま自身も少しは我慢しているのだと思う。
その証拠に夫が同じことをしようものなら、とっても怖い顔で「シャー!!」と威嚇する。
ベタベタと寄ってくる次女に対しては、最初から捕まるまいと脱兎の如く逃げていく。
つまりは人に構われるのは嫌。放っておいて欲しい。でも俺様の要求には24時間オンコールで応えるようにということなのだ。
よくよく考えてみれば、たいそうな我儘である。
まさに自分中心、身勝手この上ない。
これを人間がやったとしたら、暴君、ワンマン、自己中と非難轟々となり、家族であったとしてもまともな人間関係を築くことはできないだろう。
しかし、お坊ちゃまは同じことをしても、疎ましがられるどころか、変わらずチヤホヤと愛されるのだ。
怖い顔で「シャー!」とすれば、「強いのね〜、格好いい!」と称賛され、お腹が空いて大騒ぎしても「あらあら可哀想に…ダイエットだものね。もう少しの我慢よー」と励され、止まらぬ撫で撫で要求も「私と一緒にいるのが落ち着くのね。なんと可愛い子!」と飼い主を喜ばせるのだ。
なにをしようがすべてはポジティブに受け取られる。
時々、そんなお坊ちゃまが羨ましくなる。
毎日好きなだけゴロゴロ寝ていて、時間になればご飯が目の前に差し出され、ちょっと寂しいときは気が済むまで撫で撫でと癒され。
気に入らないことがあれば「シャー!」と歯を剥き出し怒りを露わにし、気が乗らないときは相手を完全無視。
一人になりたいとどこかへ姿を消したりと、とにかく気まぐれに暮らしている。
こんなに自分中心にダラダラと生きていけたら、どんなに楽なことだろうか。
今度生まれ変わってきた時は、優しい家族のいる家の飼い猫になり、花よ蝶よと愛されたいものだとお坊ちゃまを見ていて思うのだった。。。