In other words

I really don't know life at all ...

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東京にいながらして全国各地の美味しいものが買えるのは幸か不幸か。

若い頃から一人でぶらぶらよく旅をしているけれど、その土地、土地で心に残る印象深いものというのが一つはあるものだ。

京都、名古屋、大阪のように、年に何度か足を運ぶところは、それほどの旅情をそそられることもないのだけれど、これまでまったく縁のなかった土地を訪れると、新たな発見が多く、それはそれは楽しい。

そんな発見の中でもとりわけ忘れ難いものがあり、私の場合はそのほとんどが食べ物だ。

先だっての山陰•山陽の旅では、島根県の名産品「赤天」というものを初めていただいた。

たまたま出雲で宿泊したホテルの朝食でお膳に並んでいたおかずの一つだったのだけれど、これがとても美味しくて、いつまでも頭から離れなかった。
出雲から直帰するのならさまざまなメーカーのものを山ほど買ってかえれるけれど、その旅は出雲から松江、さらに岡山、倉敷と1週間ほど回る予定だったので、土産物屋さんに並ぶ赤天を横目で見ながら、泣く泣く島根県を離れたのだった。

そんな出雲旅の途中、あるお土産屋さんで若い店員の女の子と赤天の話しで盛り上がった。
この後も旅が続くので買って帰れないのが残念だと話すと、「アンテナショップなら、真空パックのものが売っていると思います」という有力情報を得た。

アンテナショップは好きでよく見て回っているけれど、島根県はノーマークであった。
これで東京へ帰ってからも楽しめるぞと一安心したものの、店員の女の子が続けて発した一言で喜び半減。

「赤天は周りが揚げてあるので、真空パックでないものの方がずっと美味しいんですけどね」

ちょっとガッカリしたものの仕方ない。日持ちするものではないので、旅程優先でフレッシュな赤天は諦めることにした。



そして東京に戻ってから、早速日比谷シャンテにある島根県のアンテナショップ「日比谷しまね館」へ行ってみることにした。

これがなかなか立派で、品揃えは抜群である。あのバラを模った名物の「ばらパン」など、出雲や松江のお土産屋さんよりもバリエーションが豊富なくらいだ。

もう、これならお土産など持ち帰らずとも、ここで全て揃うのでは?と、興奮した。

そしてお目当ての赤天。しっかり冷蔵コーナーに並んでいた。
しかも日持ちのする真空パックのもはもちろん、消費期限が2、3日のフレッシュ赤天もあったのだ。
とりあえず食べ比べしてみようと、両方買ってみることにした。

その夜、晩ごはんのおかずにと出したところ、家族からも「美味しい」と好評だった。

これから赤天が食べたくなったら、日比谷しまね館へGOだ!

赤天に関しては、東京で手に入ることに感謝感激なのだけど、思えばその土地を旅せずともいとも簡単に地方の特産物が手に入ってしまうのも、なんだかつまらない気がした。

今回の旅はお菓子巡りが目的ではなかったのだけれど、行ったからには当然その土地の銘菓などを買って帰ろうと思っていた。

気になっていたお菓子屋さん、通りがかったお菓子屋さん、お土産屋さんなど色々なところを見てきたけれど、銘菓とされるものはどれも東京の百貨店で普通に手に入るものばかりだった。

これには少しガッカリしたものだ。
東京で買えるものをわざわざ重たい思いをして持ち帰る必要もない。

東京にいる時は、どこのお菓子も手軽に手に入って便利だわ!などと思っていたけれど、いざ自分がその土地を旅して回っていると、あれもこれも東京で手に入ってしまうと、なんだかとてもつまらない気持ちになるのだ。

まったく勝手なものだけれど、旅の楽しみとは、その土地でしか出会えないものと出会うことである。それは食べ物でも同じだ。

そういえば、若い頃に金沢のあるお寿司屋に行った時のことだ。
「金沢ならではのネタを堪能しにきました」と言ったところ、「寿司は東京のほうがいいよ。いいネタはみんな銀座あたりに直行だからね」などと、その店の大将が笑っていたものだ。

今からかれこれ30年以上も前の話なので、今はどうかわからないけれど、銘菓に限って言えば、確実に東京の魔の手が伸びている。



しかし、確実に現地でしか味わえないものもある。
松江で味わった作りたての「朝汐」、倉敷では蒸し立ての「大手まんぢゅう」も味わった。どちらも東京でも手に入るお菓子だ。
しかし出来立ては、この土地でしか味わうことはできない。

また銘菓ではなく、東京へ進出していない人気の小さなお菓子屋さんで生菓子を味わったり、地元の方で賑わう飲食店で名物の料理に舌鼓をうったり、思えば旅の楽しみはまだまだたくさんある。

東京にいながらして、なんでも手に入ることは幸か不幸かなどと考えたけれど、やはり便利な生活の恩恵に慣れた身としては、つまらない気持ちよりも便利な方に軍配が上がる。

その土地を訪れなければ、出会えないものというのは、どこにでも必ずあるはずだ。
東京では決して手に入らないものを求めて、これからも様々なところを旅したいと思う。