先日、美容院へ行く際に「何を着ていこうかしら?」とあれこれ服を着たり脱いだりしていると、娘が一言。
「近くなんだから、なんでもいいじゃない!」
そうなのだろうか?
私、美容院へ行く時は割とファッションには気を遣うようにしている。
街歩きの途中で思い立って立ち寄るという美容院ジプシーの頃ならいざ知らず、しっかりとお決まりのサロンに予約してから行く場合は、きちんとした格好で行くことを心がけている。
それは、美容師たるものその人のイメージによってヘアースタイルを作り上げるのではないかと考えているからだ。
ジャージにベランダで履くサンダルを突っかけていくのと、少しお洒落をしてヒールの高い靴を履いていくのとでは、同じ人物でもイメージは違うはずだ。
考えすぎだろうか?
とにかくなるべく小綺麗な格好を心がけているのだけれど、それにはもう一つ理由がある。
それは施術中に出される雑誌だ。
何気なく「どうぞ」と置かれる雑誌には、実は無視できない現実が隠されていると思っている。
それは出す側も気づかずにしている、いわゆるジャッジというもので、ここでジャッジされるのは他でもない「年齢」ということになる。
その人の年齢や雰囲気、好みに合った雑誌を選んでくれるのだけれど、それはまさに
「あなたはもうおばさんね」
「あなたはまだまだお洒落現役ね」
などという暗黙の年齢判定になっているものなのだ(多分。。。)。
まさに「おばさん化」しているかどうかのリトマス試験紙。
アルカリ性ならまだまだ女性、中性ならおばちゃん。そんなところだろうか。
美容院へお洒落して出かけるのは、たとえ暗黙であっても人から「おばちゃん」認定されるのを喜んでる受け入れることができないからなのである。
ではどんな雑誌を渡されたのなら、おばちゃん判定から逃れられるのか?
ここは細かいところまで考えすぎると判断が難しくなる。とりあえず中の内容や紹介されているファッションアイテム、そして起用されているモデルさんの実年齢を参考に判断することにしている。
施術中に後ろを若い女性が通り過ぎた。
セミロングのツヤツヤヘアーをした小綺麗な30代と思しき女性だ。
推測するに独身OLだろう。胸元と七分袖がレースになっているベージュのワンピースを着ている。ネールもしっかり同系色で抜かりがない。
意識高い系の彼氏が2、3人いてもおかしくはない、いわゆる同性に嫌われるタイプの可愛い女性だ。
この女性の前にはどんな雑誌が置かれるのだろう。。。
きっと『oggi 』とか『BAILA』、ひょっとすると『GINZA』なんかも加えられるかもしれない。
興味津々だ。。。
誤解してはいけない。決してその女性と張り合おうなどとは思っていない。
自分が30代に見られているかも!などという図々しい勘違いなど微塵もない。
ただ、自分の立ち位置を知るために一番手っ取り早い方法が他者との比較だろう。
では、比較する対象をどのあたりに定めるのか。
50代ともなれば当然のことながら基準は紛れもない「自分よりも若い女」ということになる。
これ以上年齢を上げてしまえば、それこそ卒業済みという年代になってしまう。
図々しいと思いながらも、若い方へ行かせていただこう。
しかし若すぎてはいけない。さすがに20代ともなれば、自分の子供と同じ年齢だ。その辺りと比べるとなるとさすがに罪悪感がある。
そもそもはなっから比較できないのはわかっている。何度も言うけれど、そこまで図太い神経は持ち合わせてはいない。
となると30代か?
しかしここも難しいところだ。
女も30前半か後半かでは大きく違う。すでにその道を通ってきた自分にはわかる。
前半であればまだ20代の余韻が残っているものだけれど、これが30後半ともなればアラフォーなのだ。「アラウンド・フォーティー」だ、日本語に直訳すれば「40あたり」ということになる。
20代あたりと40代あたりというのは、イメージ的にも大きな開きがある。
40代と50代よりも、50代と60代よりも、10代と20代よりも、大きな開きを感じる。
比較できるとすれば、70代と80代だろうか。70代であればまだ頑張れば趣味に仕事にと精力的に活動できるイメージだけれど、これが80代ともなると途端に炬燵で居眠りをするお婆ちゃんを思い浮かべるようになる。
30代は難しい。そもそもこの年代は独身か、結婚しているのか、子供がいるか、また何人子供がいるのか、さらに言えば仕事をしているか、専業主婦なのか、兼業主婦なのか、さらに突っ込めば世帯収入など経済的状況にも見た目を大きく左右される年代なのだ。
そうなると、やはり比較対象は40代が妥当だろう。自分の年齢マイナス10歳くらいだ。
しかし昨今のファッション誌というものは、その辺りの境が曖昧だ。ターゲットとする年齢層が広すぎるのだ。そこがまた勘違いの元となるのだけれど、雑誌を年齢リトマス試験紙とするならば、比較対象は30代も加えなければならない。
なんだか訳がわからなくなってきた。。。
とりあえず、30代から40代の女性が対象となっている雑誌であればOKということにしよう。
では、いつも私にはどんな雑誌があてがわれるのか?
だいたいいつも同じような雑誌で、それなりに自尊心を満足させてもらえるのだけれど、先日はちょっと違っていた。
その日、目の前に用意された雑誌は3冊だった。
一番上の分厚いファッション誌、その名は『precious 』。
こんなの誰が買うのかしら?
といった現実離れした価格帯の広告に溢れたファッション誌には正直興味がない。
しかし、年齢リトマス試験紙的には自尊心を満足させる結果だ。
私は渡された雑誌を満足げにペラペラとめくる。
その雑誌を読む年齢にふさわしい女なのよとばかりに、まるでいつもそんな雑誌を読んでいるような素振りでページを繰る。
そして2冊目。
次もまた五十肩に響きそうな分厚い雑誌だった。
『美st』という美容雑誌だ。こちらは化粧品を紹介する雑誌だ。
化粧品には多少なりとも興味はあるから、なかなか面白く読めた。それでもわざわざ自分では買わない「美容院にいるから読む」類の雑誌だけれど、おばさん認定には当たらない。合格!
しかし、問題はその後だった。。。
3冊渡された雑誌のうちの、一番下にあった雑誌。
『dankyu』の古いカレー特集。。。
主に食についての雑誌だ。
イメージからすると、男性向けのような気がしないでもない。
どう考えても、アラサー、アラフォー女性にあてがわれるような類の雑誌ではない。
ここで年齢リトマス試験紙などと悠長なことを言っている場合でないことに気づいた。
つまりは、最初の2冊はいわゆる「お世辞」のようなもの。
私に雑誌を用意してくれた美容師さんの本音が3冊目に隠れているということなのだ。
確かに好みからいえば、ファッション誌などより、ずっと楽しい。実年齢と内容がマッチしている証拠だろう。
しかし、年齢リトマス試験紙という考えからすると、もはや年齢ではなく「性別」まで言及しなければいけない結果となってしまった。。。
「おばさん」どころか「おじさん」認定の危機だ。
思えば、美容院ならぬ病院などへ行ったとき、自ら手を伸ばすのは『週刊文春』か『週刊新潮』だ。
おじさん向けのゴシップ誌。。。
どんなに気取ってみたところで、年齢以前に私はおじさんのようなものなのだ。
もはや余計なことなど考えず、ただ綺麗にしてもらうことだけを期待して行くが身のためだと思った。せめて見た目だけでもおじさんにならぬように。
ああ、くだらないことを考えるんじゃなかった!